Column

どっちに動く、コロナ後のワンルームマンション相場

2020年5月31日

コロナ後に東京都心の不動産相場はどのように動くのか、
最近時々お客さんに聞かれます。

これはなかなか難しい質問だと思います、
なぜならば上げ要因と下げ要因が交錯しているからです。

今回はこの難しい問題に挑戦してみたいと思います。

ではまず下げ要因から見ておきましょう。

都心不動産相場の下げ要因

在宅勤務やリモートワークが定着すればどうでしょう、少なくとも今までのように毎日カイシャに行く必要はなく、例えば週に二日か三日ほどでOKになるでしょう。

このことは都内の不動産相場にどのような影響を与えるのでしょうか、まず考えられるのは都心の大規模オフィスの過剰感台頭です、大企業が都心のオフィスから出て行ってしまうことはないでしょうが、規模の縮小は十分あり得るでしょう。なお「オフィスビル総合研究所」は東京の都心5区のオフィスビルの空室率が、足元3月末の0.3%から2023年3月末に5.1%まで上昇すると予想しています、この5.1%は2014年6月以来の高い値です。

空室率の上昇は賃料の低下を招きますので、不動産価格の下落要因です。どの程度下落するかはわかりませんが、空室率0.3%⇒5.1%への上昇に見合った下落になるでしょう。弊社の事務所賃料も安くなればいいのですが・・・

以上は都心のオフィスビルのお話しです。

では居住用の不動産はどうでしょう、都心のワンルームの大半は①「地方出身の独身会社員」や②「地方出身の学生」、あるいは③「単身赴任の会社員」が住んでいます、おそらくこのうち①②「地方出身の独身会社員や学生」は影響を受けないと思います、なぜなら彼らは東京という街そのものに魅力を感じて上京してくるからです、東京の魅力は文化・芸術や食、ファッション、エンターテイメント、ステータスなどです、大学のレベルの高さもまた東京の魅力の一つといってよいでしょう。ですからこの層は地方に戻ることはないでしょうし、今後さらに東京の魅力が高まれば、逆に居住意欲を高める可能性すらあると思います。

問題は単身赴任者です、データはありませんが、この層はワンルームマンション居住者の一定割合を占めています。今後在宅勤務やリモートワークが定着すれば、果たして単身赴任という慣習はどうなるのでしょうか?東京には多くの会社の本社機能がありますし、海外を含め生産・販売・在庫のコントロール機能もあります、その機能を維持するためには常に一定の労働力が必要で、単身赴任という制度はそれを満たすため必要とされてきました。

では今後はどうでしょう。

おそらくこれは冒頭で考えた企業のオフィス需要とリンクしており、大半の仕事は自宅やリモートオフィスで処理できると思います、なので単身赴任者住宅としてのワンルームマンション需要のうち、一定部分は消失すると考えてよいのではないでしょうか。

都心不動産相場の上げ要因

逆に東京都心の不動産にとって上げ要因もあります、確かに不動産には利用価値(=実需)がありますが、実物資産としての側面もあります、つまり貴金属やコインなどと同様で、たとえ家賃を生まなくても、それそのものに希少価値があるという考え方です。

ですから私たちが不動産の相場について考える場合、このような二つの側面から見なくてはなりません、僕は前段で「不動産の下げ要因」について書きましたが、これは不動産が生み出す家賃という側面から見た場合のお話しです。

では現物資産として不動産をみた場合、今後どのような動きになるのでしょうか。

(FRBサイトより転載)

上のグラフはアメリカの中央銀行FRBのバランスシートの推移ですが、ご覧のようにコロナ後に急膨張し、足元ではコロナ前の約4兆ドル(430兆円)に対して約7兆ドル(760兆円)まで、一気に75%も増えていることがわかります、この短い期間にFRBは、ほぼ同額のドル紙幣を市場にバラまいたことになります。

日銀も負けていません、グラフの形式が違うので分かりづらいかもしれませんが、下のグラフは日本銀行のバランスシートの推移です、FRBのようにコロナ後に急伸しているわけではありませんが、直近では金額ベースで600兆円を超えています、日米のGDPの違いを考えますと、むしろ日銀のほうがFRBより積極的に紙幣を印刷しているといえるでしょう。

(日本銀行サイトより転載)

しかも日銀の開示データはFRBと違ってリアルタイムではありません、FRBのデータが5/18日時点の値であるの対し、日銀のデータはコロナが本格化する前の3月末時点のものです。おそらく足元ではさらに増えているでしょう。

このような中央銀行によるマネー供給は、当然ながら紙幣の価値を薄めます、なので相対的な実物資産の価格上昇を招かざるをえません。しかも日米ともに中央銀行は“無制限の資金供給”を決め、さらにマネー供給を拡大する決意を示しました。

このようにして供給された、あるいは供給されるであろうおカネの一部は実物資産にも流れ込む可能性が高く、その点から言えば不動産相場の上げ要因になるでしょう。

総合すればどっちに動くのか

上記のように実需の観点から見れば、コロナは都心の不動産の下げ要因になります、特にオフィス用不動産はその傾向が強く出るでしょう。一方で居住用不動産、とくにワンルームマンションにとってコロナは弱い下げ要因にとどまりそうです。

一方で実物資産としての側面では、上記のようにコロナは都心の不動産にとっては上げ要因です。

では実際にはどう動くのでしょう・・・、冒頭のように予想するのは決して簡単ではありません。が、あえてイメージするとすれば

  • 都心のオフィスビル⇒悪材料が勝り、やや値下がり傾向
  • 都心の住宅系不動産⇒悪材料と好材料が交錯し現状維持程度

少し大雑把ではありますが、僕はこのようにみております。

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