Column

「真の収益率」から見た不動産投資

2020年2月13日

不動産は実物資産として投資に値すると僕は思いますが、
いくつかの点でほかの資産と大きく異なる性格を持っています。

一つ目は地震や火災、津波など天災の影響を受けやすく、
万一の場合大きく価値が減損してしまう点です。

ただし「万一の場合大きく価値が減損する」のは、
不動産だけではありません。

株は会社の倒産によって紙くずになってしまいます。

投信経由で株を分散保有していても、
運用会社が破綻すればタダではすみません。

ルールとして運用会社は自社の資産と信託財産を分別管理する
ことを義務付けられていますが、いつの世にもルールを守らない
人たちはいます。

また債券を持っていれば、
発行体の破綻によって価値は大きく減損します。

コインや宝石、貴金属などは、実物資産の中でも
安全な部類に入りますが、火災や盗難によって消失して
しまうこともあります。

このように考えてまいりますと、
あらゆる資産には固有のリスクがあることがわかります。

ですから不動産のみが、
ことさら高いリスクをもっているわけではありません。

ただしこの点をのぞいても、
不動産はほかの資産と異なる性格を持っています。

それは老朽化による価値の減少です。

これはさきほどの天災とは異なり、
他の金融資産には見られない、いわば不動産固有の特徴です。

従って私たちが不動産投資を実践する場合、
この老朽化にともなう価値の減損ぶんを、
表面上の収益率から控除して評価しなくてはなりません。

もしこれを怠るのなら、私たちは不動産投資の収益率を
高く見積もってしまうことになるでしょう。

ではこの老朽化に伴う価値の減損ぶんを、
いったいどの程度とみておけばよいのでしょう。

都内の築浅ワンルーム・マンションを例に試算してみましょう。

試算の前提は以下の通りといたします。

  • 物件に占める建物の価値を50%、土地の価値を50%とする
  • この物件の収益率(固定資産税、管理費・積立金、空室ロス
    など差し引いた私たちの最終的な取りぶん)を4.0%とする
  • 築15年で取得し、この物件は向こう50年間稼働すると考える

上記条件では、
年あたりどの程度価値が減損してゆくと考えればよいのでしょう。

まず土地は老朽化しませんので、老朽化による価値の減少は
建物部分である50%のみが対象となります。

さらにその50%部分が向こう50年で無価値になりますので、
一年あたりの価値の減損率は、この物件の取得価格の1%となります。

注)50%÷50年=1%

従って皆さんが仮にこの物件を購入されたとすれば、
毎年購入額の1%ずつ価値が減少することになるわけです。

ですから私たちがこの物件の本来の収益率の計算する場合、
この1%を物件の収益率から差し引いて考えなくてはなりません。

このように不動産特有の老朽化という価値の減少部分を差し引くと、
私たちが不動産投資から得られるこの物件の「真の収益率」は、
年あたり3.0%であることがわかります。

注)4.0%-1%=3.0%

さてここからが今回の本題です。

果たしてこの3.0%は低いのでしょうか?
それとも高いのでしょうか?

読者のなかには「不動産投資でたったの3.0%か?」とお感じになる
かもしれませんが、これはすでに老朽化による価値の減少ぶんを
控除したものです。

冒頭で僕は不動産投資に特有な性格が二つあると申しました。

そしてその一つとして「老朽化に伴う価値の減少」をあげましたが、
すでにその部分(1%)は控除済みということになります。

さらに不動産投資特有が持つ二つ目のリスク(火災や地震など天災)についても
ふれましたが、上記のように固有のリスクがあるのは債券にしても
株にしても同じです。

つまりこの「3.0%」は不動産投資の「真の収益率」で、
これによってはじめて私たちは、不動産を株や債券などと
同列の金融商品として比べることができるのです。

そのような視点で他の資産をみるとどうでしょう。

現在の30年物日本国債の利回りは0.4%弱に過ぎません、
株に至っては30年前の高値をいまだ超えることができませんし、
価格変動のリスクも負わなければなりません。

このようなことから、「純粋な金融商品」としてみても、
日本の不動産は一つの選択肢であることがわかります。

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