Column

レバレッジとライフプラン

2018年8月29日

みなさんこんにちは。

僕の事務所にはいろんな方がお見えになりますが、
「レバレッジ依存症」は一つの傾向です。

レバレッジは「テコの原理」のことですが、
金融の世界では手持ちの資金に対して借り入れを起こし、
大きな投資を行うことを指します。

例えば株の信用取引もレバレッジを利用していますし、
為替の証拠金取引も同様です。

時々レバレッジをかければ儲けが大きくなると勘違いする方がいますが、
決してそんなことはありません、もちろん勝負に勝った時の儲けは
大きくなりますが、逆に負けたときの損も同じ幅で大きくなります。

つまりレバレッジ自体は収益に対して中立で、
儲かった人の取り分と損をした人の負け分を合わせると
チャラです。

不動産投資におけるレバレッジも同様です。

例えば皆さんが頭金1000万円に対し9000万円の融資を受け、
1憶円のアパートを買ったとしましょうか。

仮にこの物件が毎年4%の収益を生んでくれるとしますと、
皆さんは毎年400万円の家賃を得ることができます。

  • 1憶円×4%=400万円

これだけをみればレバレッジによって儲けのみが増え、
損することはないように見えますが果たしてそうでしょうか。

不動産を現金で買う場合、銀行への利払いは不要ですが、
融資を受けるとそういうわけにはゆきません。

例えば年あたり3%といった利息が、確実に銀行へ
流れて出てゆくわけです、さらに変動金利の場合は、
金利の上昇による利払いの増加もあり得ます。

また不動産には空室がつきものです、仮に30%の空室が出れば
どうなるでしょう、皆さんの遺失利益(注)は120万円にも
なってしまいます。

注)本来もらえるはずだったが、もらえなくなってしまった利益、
このケースでは400万円×30%=120万円が遺失利益です。

レバレッジをかけず1000万円の物件を現金で購入した場合、
遺失利益は12万円で済みますので、このレバレッジによって
損失の幅も10倍に増えてしまいます。

  • 120万円÷12万円=10

一方で収益のほうはどうでしょう。

確かに1000万円を元手に1憶円の物件を買えば、
毎年400万円の家賃が手に入ります、
この400万円は元手1000万円の40%ですので、
収益率は10倍にも膨張することになります。

  • 400万円÷40万円=10

ただし上記のように銀行への利払いもありますし、
空室もあります、これらはいずれもお金の流出要因です。

たとえば金利が年3%で空室率が1%だった場合どうでしょう。

流出するお金の合計4%となり、それだけで物件の収益率と
同じになってしまいます。

  • 1%+3%=4%

つまり収支トントンということです。

不動産におけるレバレッジの効果は上記のように
表面に現れにくいものがあって計算しにくいのですが、
おそらく金融の世界におけるレバレッジと同様でしょう。

つまりレバレッジによって収益率は変わらず、
結果の振れ幅(=リスク)のみが拡大しているということです。

不動産の世界では売り手は必ずといっていいほど
レバレッジ投資を勧めます、なぜなら顧客の資金がそれだけ
ふくらみ、売り手の収益が増えるからです。

仲介会社の手数料は物件の価格に応じて支払われますので、
ある意味でこれは当然です。

ですから皆さん自身がレバレッジの意味を理解して、
レバレッジをかけるべきか否かを判断しなければなりません。

ではどうすればレバレッジをかけるべきか否かを
判断できるのでしょう。

先ほど申しましたようにレバレッジの本質は
振れ幅の拡大で、収益そのものへの影響はありません。

この場合に大切なのは、ライフプランの設計とそれにともなう
お金の流れの計算です。

人は生きてゆくなかでさまざまなイベントを経験します。

お子さんの教育、ご自身の定年退職、自宅のローン完済、
年金の受給開始・・・このようなイベントから予想されるお金の
流れを把握することが何よりも大切です。

もし天寿を全うするであろう時期まで十分なお金を維持できるなら、
問題はありません。

が、どこかでお金が不足するようなら手持ちの資金の
運用を考えなくてはなりません。

たとえば将来不足する部分が、手持ち1000万円の資金で
不動産を購入し、そこから得られる家賃でカバーできるとしたらどうでしょう。

皆さんはこの場合でも9000万円の借りれを起こし、
1憶円の物件を買う必要があるでしょうか。

先ほども申しましたようにレバレッジは収益率に影響を
与えません、単に結果の振れ幅を拡大しているだけです。

このケースで1憶円の物件を買うことは、
運が良ければ想定以上に余裕のある人生を送れるが、
逆の目が出れば想定したライフプランは崩れ去るということです。

これに対してレバレッジをかけず、手持ちの1000万円で
物件を買えば想定通りの人生を送ることができます。

レバレッジが悪いとは言いません。が、上記のケースで
レバレッジをかけて物件を買うべきでしょうか。

不動産をお買いになるときはそのような観点で考えて
みてください。

では今回はこのへんで。

  • 株式会社 銀座なみきFP事務所
  • アンティーク・コインで資産を運用する
  • カラーストーンで資産を運用する
  • 通販サイト「ときいろ」